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2021年6月22日

植物たちの生きる戦略②

今日の午前10時の記念碑台ガイドハウスの気温は19℃で、風も適当に吹いて心地よい。

梅雨の時期でもあり、アジサイにはうれしい季節だろうが、他の植物たちの花は少ないのです。

そういうときだから、今、花を咲かせる植物には、特別な戦略があるのかもしれないのです。

記念碑台周辺を散策してみつけることにします。

「あっ、咲いていた。」1週間前には、気づかなかったのですが。

花がウメに似ているということから、バイカ(梅花)ツツジ(ツツジ科)と言われます。直径約2cmの花は、葉の下側で咲いているので、見過ごしてしまいそうです。

しかし、白い花びらには、赤い斑点があり、虫たちに蜜のありかを分からせようとする戦略なのです。雄しべが内側に向くようになっているから、真ん中に入ってきた虫に、

着実に花粉を付けられるようにしているのでしょう。花の綺麗さだけではないのですね。

 

雄しべが伸びている、ということでは、この花も同じです。

アジサイの中では、一番先に咲くコアジサイ(アジサイ科)です。雄しべが、グ~ンと伸びているのが分かるでしょう。

でも、このコアジサイは、先程のバイカツツジのように、赤い斑点はありません。虫を呼びよせる戦略は、斑点でなく、香りなのです。

咲き始めのコアジサイには、ほのかな甘い香りが漂ってきます。この香りに引き寄せられる虫たちは、きっとこの長い雄しべの花粉を運んでいくのでしょう。

香り戦略ですね。

 

今度は、花ではありません。

葉っぱが白くなっているのです。これをマタタビ(マタタビ科)と言います。

昔、山中で道に迷い歩き疲れ倒れた旅人が、垂れ下がっていたこの実を食べて、急に元気が出て、「また旅」を続けることができるようになった、ということからこの名前になったとか、

という話もあります。

ちょうど、葉が白くなる頃に花が咲くのです。葉の上あたりに、丸いものが一つずつ見えますね。これは蕾なのです。

花は白いのですが、葉の白さの方が大きくてずっと目立ちますね。葉の大きな白さで虫を引き付ける戦略なのです。

マタタビは、雌雄異株と言って、雌株と雄株が分かれているのですが、蕾が一つずつついているのは、雌株なのです。

 

アジサイの下をのぞくと、何やら怪しい物体があります。

キヨスミウツボ(ハマウツボ科)と言います。白くて葉緑素を持ちません。

この植物の戦略は、寄生です。他の植物の栄養をもらう戦略なのです。

ここでは、アジサイから栄養をもらっているようです。白い先の方が、花ということですが、分かりにくいですね。

 

最後の花は、みなさんご存知ではないでしょうか?

白くて袋状に垂れ下がっているホタルブクロ(キキョウ科)です。まわりに蕾があるから、多分、咲いて間もないのでしょう。真ん中の白いのは、雄しべが集まっているのです。

虫たちがやってきて、雄しべの先の花粉がなくなると、雌しべが伸びてきて、柱頭が3裂するようです。

雄しべが働く時期と雌しべが働く時期をずらして、自家受粉するのを防いでいるのですね。これも生き抜く戦略の一つです。

植物は終わりなのですが、この時期に忘れてはならない生き物がいました。

モリアオガエルの卵です。ちょうど卵からオタマジャクシにかえったら、下の池に落ちるように、水の上の枝に卵を産み付けるのです。

モリアオガエルのあの大きな眼で、水面を見つめながら卵を産むのでしょうか?これも親が子を生かすための戦略ですね。

しかし、その水中では、アカハライモリがオタマジャクシたちを待ち構えているのです。これも生きる戦略と言えば、仕方ないですね。

 

こうやって、生き継がれていく戦略は、気の遠くなるような歳月をかけて作り上げてきたのでしょう。

そんな一端をぜひ、六甲山で味わいにきてほしいものです。

 

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